今回は、普通の会社員でもできる 日本版 FIRE超入門の書評・感想です
タイトルのとおり日本でFIREを達成するために、知っておきたいエッセンスをギュッと詰め込んだ内容でした。
本書では、著者がFP(ファイナンシャルプランナー)ということもあり、かなり堅実なFIRE計画が紹介されています。
個人的にはFIREを目指そうかなと考えている人より、すでにFIREを目指している人にオススメの一冊です。
著者について
1972年生まれ。フィナンシャル・ウィズダム代表。
ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。
確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。
1995年中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。
わかりやすく読みやすいお金のコラムが人気で、Yahoo!ニュース、日本経済新聞電子版、マネー現代、プレジデントオンラインなど、月20本以上の連載を抱える人気FPのひとり。
コミックレビューのコラムも連載しているほどのゲーム、アニメ、マンガ好きであり、自称・オタクFP。
コミックの蔵書は4000冊以上。
仕事や家事育児の効率化をつねに模索するライフハック好き。
本書の著者情報より一部引用
本書の3つのポイント(要点)
私なりの本書のポイントを3つにまとめました。
- 収入を増やす方法は、昇給・転職・共働き(結婚している場合)。
給与や評価に関するルールを読みこみ、資格取得やよい評価をめざして昇給をねらう。
今の仕事で昇給が見込めない場合は、転職する。 - 家計を見える化して、節約する。
いらないモノ・サービスは買わない。 - 世界中の様々なアセット(株式や債券、不動産など)に分散された、インデックスファンドを長期積立投資
- 投資はNISAやiDeCoなどの非課税制度を活用する。
- 住宅・保険・年金・子の教育費・介護・相続について、FIREをめざしながら考えないといけない。
- FIRE後にかかるお金について知っておく。
- 早期退職してから年金の受給がはじまる老後までとそれ以降に分けて必要となる資金を計算。
- 資産額に応じて、何歳でFIREできるというイメージをもつ。
- まずはプチFIRE(60歳)を達成することをめざし、50歳代、40歳代と小さなゴールをいくつも設定する。
本書では、詳しく解説されています。
本書の注意するポイント
①投資に関する内容は、控えめです。
本書は日本で再現性高くFIREというテーマなので、長期分散のインデックス投資がオススメされています。
投資のテクニックというより、「この投資はオススメしない」という内容が多い印象です。
②情報量が多く幅広いので、はじめてのFIRE本としては難しく感じてしまうかも。
③本書のFIRE計画は、かなり保守的に見積もったものです。
FIREに憧れて浮足立っている人は、「こんなに大変なのか……」と面食らうかもしれません。
とはいえ、FIRE計画は早期退職してからの自分の人生設計です。
FPという視点からみれば、このぐらい保守的に考えるべきなのかもしれません。
本書がオススメな人
- 堅実に再現性高く、FIREを考えたい人
- FIREをめざしていて、年金やお金に関する国の制度について知りたい人
気になったところを考察
共働きについて
本書では収入を増やすの項目で、共働きがオススメされています(もちろん結婚している場合の話です)。
理由は、1人で年収1,000万円稼ぐより、2人で合わせて1,000万稼ぐ方が簡単だということ。
これは共働きであるわが家も、大いに実感します。
本書の内容に加えて、共働きは1人で年収1,000万円稼ぐよりも税金面で有利です。
簡単にいうと1人で1,000万円稼ぐより、2人で1,000万円稼いだ方が手取りが多くなります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
とはいえ、同じ価値観をもつパートナーを探すことは難しいです。
結婚してから「実はFIREしようと思ってるねん」とパートナーに理解してもらうことは、もっと難しい気がします。
ちなみに私は結婚してからFIREすると決め、妻に相談しました(私のことを理解してくれた妻には感謝しかありません)。
結婚したい・子供が欲しい人は、マネーリテラシーを高めるためのコミュティ(リベ大など)も多いので、そういったところでパートナーを探すと価値観が近い人が見つかるかもしれません。
他にも本書には、共働き家庭(主に男性)に向けて、育児と家事を積極的に参加するように書かれています。
これは世の男性にもっと伝えたいと思いました。
最近は、育児・家事に取り組む男性も多くなりましたが、周囲の話を聞くと「やってあげている」といったニュアンスを感じます。
私の母親は専業主婦で、育児・家事は母の役割でした。
その母親をみて育ってきたので、私のなかにも育児・家事は女性の仕事というバイアス(思い込み)があると思っています。
共働きである以上、家庭での役割も分担すべきです。
ましてや「やってあげている」といった態度を、妻に感じて欲しくありません。
なので、「育児・家事は7割くらいやる‼」くらいの気持ちで、取り組むようにしています。
私のようなバイアス(思い込み)がある方は、それぐらいの意気込みでキチンと分担できるのではないでしょうか。
きっとパートナーは、あなたの家事・育児を「やってあげている」という態度に気づいています。
他人である私が周囲の人から感じるくらいですから。
私も本書を読んで、改めて気を引き締めようと思いました。
バランス型のインデックスファンドがオススメされている
本書では、様々なアセット(株式や債券、不動産)に分散されたバランス型ファンドがオススメされていますが、私は「S&P500や全世界株式などのインデックスファンドと現金で、ポートフォリオを組んだ方がいいのでは?」と考えます。
理由は以下の2つです。
- 株式はハイリスクハイリターンだが、長期で運用するならリスクが減り、様々なアセットの中でもリターンが最も高い
- バランス型ファンドは、資産比率を変更するのが難しい
様々なアセットを組み入れるメリットは、資産全体の値動きをマイルドにし、リスクを抑えることです。
基本的にリスクが下がればリターンも下がります。
どれだけ資産の値動きを許容できるかにもよりますが、長期の運用を前提とするなら資産形成期は、リスクをとってリターンを狙う方が効率がよいです。
また、バランス型ファンドは、資産比率が商品によって決まっています(例 株式70% 債券30%など)。
年齢や資産状況によって、資産比率を変えることはよくあることです。
このときに、バランス型ファンドだと資産比率を変更させることが難しくなります。
それならば、資産形成期は株式と現金で運用しておき、必要に応じて債権や不動産などほかのアセットを組み入れて比率を調整する。
この方が自由度が高く、資産を増やす攻める時期と資産を減らさない守りの時期のメリハリをつけることができます。
評価とまとめ
本書は、日本の社会や制度に基づいて堅実なFIREを目指すための本です。
特に日本の年金やお金の制度、FIRE実行後の手続きやもらえるお金、かかる費用などの内容は、非常に学びになりました。
他にも「収入を増やす」、「支出を減らす」、「資産を増やす」、「FIRE後のメンテナンス」など幅広く紹介されています。
本書の堅実なFIRE計画をベースに、他の本や動画で学んだ知識で投資・節約・副業などを自分なりアレンジしていく。
そうすることで経済的自由への道がより早くなると感じました。